今回の記事は、株式会社クリーク・アンド・リバー社が運営するクリエイティブ開発スタジオ「C&Rクリエイティブスタジオ」内にあるVFX開発専門のVFX STUDIOとゲームエフェクト制作専門の株式会社ランチタイムのコラボ対談です!
現役のプロとしてリーダーも務める若手エフェクトデザイナー2人が、チームのリーダーに関することやエフェクトデザイナーのキャリアなどについてお話します!
それでは、どうぞ!
◇ファシリテーター
五十木 絹さん(以下、五十木):株式会社ランチタイム 取締役 兼 管理部 部長
◇スピーカー
S・Kさん(以下、S・K):株式会社ランチタイム リードエフェクトデザイナー ※顔出しNGの為イラスト
竹沢 和仁さん(以下、竹沢):株式会社クリーク・アンド・リバー社 VFX STUDIOリーダー・3DCG VFXデザイナー
※本記事では、映像系の職種と区別しやすくする為に、「VFXアーティスト」という言葉は使わずに「エフェクトデザイナー」と統一して表記しています。
五十木:今回は、若手リーダーが語る!チームを率いて見えた景色ということで、現役でチームのリーダーを務めているお二人に、お話を伺っていきたいと思います!
エフェクトデザイナーに興味のある方やエフェクトデザイナーになりたての人に向けて、リーダーとして意識していることやエフェクトデザイナーのキャリアについてもお話出来たらと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
竹沢・S・K:よろしくお願いします!
目次
役職に就くまでに意識していたこと
五十木:じゃあさっそく質問に入ろうかと思いますが、お二人がリーダーのポジションに就くまでに「意識していたこと」や、「実際に行っていたこと」ってありますか?
竹沢:僕は「C&Rクリエイティブアカデミー」を経てVFX STUDIOのエフェクトデザイナーになったのですが、アカデミー在籍時からアカデミーやエフェクトクラスについての改善提案を出したりしていて、入社してからもずっと続けてました。
「カリキュラムのこの点はこうしたほうがもっと良くなるんじゃないでしょうか?」という感じで、気づいたことは積極的に伝えてましたね。
その他には自主制作で、Xにポストしたり、最近だと仕事とは別で個人的にNovaShaderの講座をYouTube動画にしてNotionなどで解説記事化したり。
楽しくてやっていた部分も大きいんですけど、振り返ると結構積極的に動いていたなと思います。
五十木:竹沢さんのYouTubeチャンネル、弊社や「Lunch Time エフェクトラボ」でもよく紹介させてもらってます!
エフェクトの勉強方法がわからない学生さんに「兄魔もここ※さんっていう方がわかりやすく紹介してるから見てみて!」って感じで、勝手に布教してます(笑)
竹沢:本当ですか!うれしい!
五十木:今後とも更新よろしくお願いします!S・Kさんはどうですか?
S・K:いろんな人とコミュニケーションを取ることは、結構意識してました。
わからないことはすぐ聞くようにして、その分知識も増えるし、いざ教える立場になったときに、ちゃんと理由をつけて説明できると思うんですよね。
だから、いつでも教える側になれるように、自分から積極的に話しかけて、すっと答えられる準備はしてました。
ターニングポイントになった出来事
五十木:では次の質問です!「ゲームエフェクトデザイナーという仕事をしている中で、ターニングポイントとなった出来事」があればお伺いしたいです!
竹沢:僕は、講師として“教える側”になったことが最初のターニングポイントだったなと思ってます。
また最近では社内プロジェクトの「IZON.第1節 封厄ノ塔」(以下、「IZON.」)でリードのエフェクトデザインを担当して、提案やシェーダー作成、ルックの基準づくりなど、コアな部分にも関わらせてもらいました。
このプロジェクトを通して、ゲーム全体を見ながらエフェクトを作れるようになったと実感していて、それも自分にとって大きなターニングポイントだなと思っています。
五十木:「IZON.」広告も結構出されてましたよね。デザフェスに行った時もブースを出されてたのが記憶にあります。あのエフェクトをリードでやられてたんですね。
竹沢:そうですね!光栄なことにリードを担当させていただきました!
五十木:S・Kさんはどうですか?
S・K:自分の作った作品が初めて世に出たときですね。
SNSでエゴサしたときに、自分が意識してなかった部分に注目してる人がいたりして、「そんなところ見てるんだ!」って驚いたのをきっかけに
それからは細かい部分にもちゃんとこだわっていこうって、より意識するようになりました。
竹沢:ユーザーとかの意見って率直に嬉しいなって思いますよね。
S・K:そうですね!あとはこだわったところに気づいてもらえてるとめっちゃ嬉しいです!
リーダーやメンター的な立場で意識していること
五十木:続いての質問ですが「リーダーやメンター的な立場で意識していること」はありますか?
S・K:意識していた事のコミュニケーションの話にもつながるんですけど、
いざ自分がリーダーの立場になったときに、メンバーが「リーダーが怖くて相談できない」ってなっちゃうと、後々大変なことになると思うんですよね。
だから、チーム内で話しやすい空気を作ることは、かなり意識してました。
怖がらせないように雑談を混ぜたり、「最近こんなゲーム出たよね」「やってみた?」みたいなライトな話題を振って、楽しく、ゆる〜く、ふわふわしつつ、でも仕事はしっかりするよって感じです(笑)
五十木:ランチタイムは業務はキッチリしていますが、それ以外は結構ワイワイガヤガヤしてる感じですよね~
竹沢さんが意識されていることは何でしょうか?
竹沢:メンター的な立場で関わるときに意識してるのは「いいアクションはちゃんと褒める」ことですね。
例えば「自分でスケジュール表を作ってみました」みたいなことでも、それってすごくありがたいし、まずはしっかり尊重するようにしてます。
その上で、「ここをもう少しこうするともっと良くなるかもね」みたいに、押し付けじゃなくて提案として伝えるようにしています。
他職種連携の面白さと難しさ
五十木:エフェクトを作るとき、クライアントの方や他の職種の方とも関わる機会があるかと思います。そういった連携の中での面白さや難しさ等を感じたことはありますか?
竹沢:エフェクトって、結構「なんとなく」な世界なんですよね。
擬音で伝えられることも多いです。
もちろん案件によるんですけど「このリファレンスの動画っぽい感じで」とか、「めっちゃカッコいいビーム作ってください」みたいに、曖昧な発注が多かったりします。
それを技術的に実現できるかどうか考えるとき、他のセクションとの調整がめちゃくちゃ大事になります。
例えば、キャラに付随するエフェクトなのか背景側なのかとか、実装可能かどうかとか。
キャラモーション、背景、プログラマー、TAといったいろんな人たちと調整しながら、形にしていく必要があります。
その部分が楽しいんですけど、同時にすごく難しいところだな〜と感じてます。
だから、エフェクトデザイナーっていろんな人と関わりながら進めていく仕事だし、
他のデザインセクションと比べても、コミュニケーション力がかなり大事だなって思います。
S・K:わかります。
普段当たり前に使ってる用語でも、それをクライアントの方に伝えるとなると、「どう言語化するか」がほんとに難しいですよね。
それに、案件ごとに使うエンジンが変わったりして、納期もタイトな中で毎回慣れるのに時間がかかることもあります。
そういう意味でも、やっぱり臨機応変さが求められる職種だなって、すごく感じていますね。
この仕事を続けていて良かった、と感じた瞬間
五十木:この仕事を続けていく中で「続けていてよかった、と感じた瞬間」はありますか?
S・K:普段だったら関わることのないような人たちと関わる機会が多いなってすごく感じていて。
案件によっては、アニメーターさんとかエンジニアさん、モデラーさんとか、
いろんな職種の方と話す機会が多くて、そのたびに自分が知らなかった知識がどんどん増えていくんですよね。
「自分が知らない世界」を知れるっていうのは、この仕事をしてるからこその楽しさだなって思いますし、本当に「この仕事やっててよかったな」ってめちゃめちゃ感じますね。
竹沢:すごい!いい話!
五十木:うん、めっちゃいい話!
S・K:わあい!うれしいですね!
竹沢:これはちょっと自分本位な話になっちゃうんですけど(笑)
エンディングのクレジットに自分の名前が載ったときとか、とても嬉しいですね。あとは、自分が作ったエフェクトに対して、
クライアントの方から「めっちゃいいね!」って直接言ってもらえたりすると、
もう、超嬉しいです。
「やっててよかった〜!」って本当に思います。
五十木:ゲームエフェクトのお仕事ってクレジットに名前が載る載らないって結構重要な話かなと思うんですけど、名前があるとハッピーですよね!
S・K:わかります。知り合いのお名前があってもうれしいですよね!
五十木:確かに。仲良くさせていただいてる企業様の名前が入ってたりするとテンションが上がりますね!
そういうところでいうと、クレジットに載っていた企業を調べたりとかもありました?
竹沢:就職する前にすごい調べてました!就職先を考える上での、情報源みたいな感じだったかもしれないですね。
キャリアアップのために必要なスキルや経験
五十木:続いての質問ですが「どんな経験やスキルがキャリアアップにつながると感じていますか?」
S・K:リーダーになるためのスキルで言うと「いろんなエンジンやソフトを触ってみるといいよ!」ですね。
自分も最初はUnityしか使ってなかったんですけど、Unreal Engineに触れてから視野がグッと広がって、
クライアントの方にも「こういう表現どうですか?」って提案できるようになったんですよね。
PhotoshopやAfter Effectsも、テクスチャの幅が広がるので、触っておいて損はないと思います!
五十木:そうなんですね!竹沢さんはどうですか?
竹沢:進みたい方向にもよりますが、今の業界だとUnreal Engineの需要は高いと感じます。
Unityを極めるのもいいですが、ハイエンドなコンシューマー系を目指すならUEも少し触れておくと良いと思います。
また、キャリアアップを考えるなら「デザイン寄り」か「テクニカル寄り」かを意識すると結構変わってくると思っていて。
「テクニカル寄り」を目指すなら数学やプログラム、シェーダー知識が役立ちます。
ただ、数学やプログラムなど苦手だったりすると中途半端になってしまうと思うので無理せずに、「デザイン方面」でスキルを伸ばすなど自分の得意分野を突き詰めることが大事ですね。
新人時代の自分にアドバイス
五十木:「新人時代の自分にアドバイスをする」としたらお二人は何を伝えたいですか?
S・K:「まずリファレンスをよく見て、真似してみよう」ですね。
そこから「これやりたい!どう作る?」って考えられるようになったので、悩む前にまず手を動かせばよかったなと思います。
五十木:とても大事。とても大事です。
竹沢:学生の頃の話に戻るんですが、学生の頃はゲームやアニメ、漫画をめちゃくちゃ見てたんですけど、今思うと、もっと引き出しを増やしておけばよかったなって思います。
たとえばクライアントの方に「あのアニメのあのビームで」って言われたときに、すぐピンとくると話もスムーズで盛り上がるんですよね。
作品を作るのも大事だけど、知識を広げるのもコミュニケーションとか制作にすごく活きるなって感じてます。
五十木:当たり前のことのように思いますが、お二人のアドバイスは本当に大事だなって改めて思いますね。
今後のビジョン
五十木:ざっくりした質問になるんですが、今後お二人はどんな風に成長していきたいと考えていますか?
S・K:自分は、まだあまりVRや立体空間の自己投影型ゲームには関わったことがなくて、プレイする機会もそんなに多くないんですけど、それでもエフェクト表現としてはすごく興味があります。
たとえば、昔読んだ本の描写をエフェクトで再現できたらいいなとか。
あと自分、小さい頃の夢が「魔法使いになりたい」だったんですよ(笑)
今でもちょっとなりたいなって思ってるんですけど、その“魔法使いになりたい人”として、VRは「手を振ったら魔法が出る」みたいな、自己投影型の演出ができるのがすごく魅力的だなって感じてて。
そういう没入感のある魔法演出のエフェクトを、いつか自分の手で作れるようになったらいいな〜って、めちゃくちゃ思っています。
竹沢:同じです!!僕も魔法使いになりたかったんですよ(笑)
超テンション上がります!
S・K:え!やっぱり魔法使いになりたいものですよね。わかります!
五十木:エフェクトデザイナーで「魔法使いになりたかった」って人、何人か知ってるんですけど、魔法使いになりたい → じゃあ魔法を作ろう → それってエフェクトかも! みたいに考える人は多いのかもしれないですね。
竹沢さんの今後のビジョンはどうでしょうか?
竹沢:一番の目標は、世界一のゲームエフェクト教育者になることですね。
そのためには、いろんな幅広い知識が必要だと思っていて、例えばHoudiniや手書き系のエフェクトとか、
そういったことをある程度解説できるくらいのスキルを身につけて、世界でも教えられる存在になりたいなって。
めっちゃ壮大かもしれないですけど、言ったもん勝ちかもしれないですね(笑)
五十木:できそうな感じがします!
竹沢:やっていきたいですね!
これからゲームエフェクトデザイナーを目指す人へ向けて
五十木:最後の質問です!これからゲームエフェクトデザイナーを目指す人へ向けて、それぞれ一言ずつお願いします!
S・K:エフェクトデザイナーって、毎回状況に応じて臨機応変に動く必要がある仕事だと思うので、だからこそ、大変なことも多くて、途中でしんどくなる人もいるかもしれません。
でも、完成した作品が世に出たときの喜びや達成感は本当に大きいです!
「エンドロールに名前を載せたい」と思ったことがある人も多いと思いますが、この仕事はその夢を現実にできる職業だと感じています。
もちろん、案件によっては自分の意見が通らなかったり、決められたテイストに合わせなきゃいけないことも多くあります。
でも「もっとこうしたら良くなるかも」とか、「この色を使ってみたい」みたいなアイデアを出すチャンスはたくさんありますし、歓迎してくれる現場も多いです。
だからこそ、「自分の好き」を大切にしながら形にできる、夢のあるクリエイティブな仕事だと思います!
竹沢:本当にありがたいことに、エフェクトってまだクリエイターの数が少なくて、
それに対して需要がすごく高い業界だと思うんですよね。
子どもの頃に憧れてたゲームに携われるチャンスもあったりするので、
そういう意味ではめちゃくちゃ夢のある仕事だなって思います。
その分「入りやすそう」とか思われるかもしれないんですけど、
実際のところ、年々クオリティの基準もどんどん上がってきていて、
ユーザーの目もかなり肥えてきてるので、やっぱり本人の努力は絶対必要です。そこをちゃんとわかったうえで飛び込んでくれたら、
すごくやりがいのある、いい業界だと思いますよ!
五十木:ありがとうございます!
ということで、今回は新人からリーダーになっていく過程やキャリアについてなどを、お二人にお話しいただきました。
エフェクトデザイナーを目指している方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
本日はありがとうございました!
S・K:ありがとうございました!
竹沢:ありがとうございました!