この記事ではゲームエフェクト業界での「評価者に伝わるデモリール、ポートフォリオ」のポイントについて深掘りしていきます。
デモリールやポートフォリオの作品については弊社スタジオメンバーや学生さん、C&R Creative Academyの生徒さんから相談されることも多く、その際にお答えしていた内容をまとめました。
就活や転職、さらにその後の案件獲得の際にもとても役立つ内容だと思いますので、都度チェックに活用いただけますと幸いです。
今回記載する内容は一例にはなりますが、こちらに記載してある内容を意識するだけでもかなり良いデモリール、ポートフォリオに近づいていけるかなと思います。
ぜひご自身のエフェクト作品に取り入れてみてください。
対象読者
・エフェクトデザイナーを目指す方
・エフェクト業界に転職しようとしている方
・希望の案件に挑戦していきたい方
・「何を意識して制作するのが良いか」悩んでいる方
・「現場がどんなところを見ているか」知りたい方
デモリール、ポートフォリオとは?
まず、現場や人によって呼び方は違うと思いますので、
ここでの明確な差別化としてエフェクトの「デモリール」と「ポートフォリオ」を以下のように定義した上で解説していきたいと思います。
・デモリール:作品をつなげた「動画作品」集
・ポートフォリオ:作品を補足する「PDFなどの解説資料」

デモリールとポートフォリオの目的とは?
極端な例かもしれませんがエフェクトのお仕事をする上で、以下がおおよそのデモリール、ポートフォリオの目的かなと思います。
・送るデザイナー側:お仕事を獲得する(自分のスキル/方向性をアピールする)
・受け取った企業側:今後の仕事を任せる判断材料にする(求めるスキルをどの程度満たしているか)
└この難易度の案件をお願いできそう
└今後こんな活躍をしてくれそう

どんなデモリールを作ればいいか悩んでしまう方は、この「何の目的で作成しているか」を考えると少し方針が明確になるかと思います。
採用担当、現場担当者が見ているポイント
(大前提)ゲームエフェクトを意識できているか

今回は就活や応募時のゲームエフェクトに特化してのお話となりますが、
デモリールはエフェクトデザイナーとしての「こんなお仕事ができる!」のスキルを伝える、アピールするための作品集だと思っています。
そのため大半がAeでのコンポジット、ゲームエンジンは触っていない、シミュレーションメインなど…だと、本当にゲームエフェクトがやりたいのかな?…と感じる内容は疑問を感じます。
まだその点もわからないという方は、ぜひ皆さんが普段プレイしているゲームを観察して「ゲームにはどんなエフェクトが発生しているか」「どう作られていそうか」などを意識して制作していくのがおすすめです。
プロジェクトのお仕事をお任せできるスキルがあるか
デモリール

・求めるクオリティ基準、製作スキルに達しているか
・求めるテイストのエフェクトを製作していけそうか
・開発プラットフォームやエンジンに対応できそうか
・成長性、将来性は感じられるか など
ポートフォリオ・補足資料

・素材を作成できるか
└テクスチャ、メッシュなど
・スケジュールなども意識できそうか
・発注の意図を考え製作/相談、FB対応はできそうか
・どの程度のエフェクトタスクをお願いできそうか
└絵コンテ作成、案出しからのタスク
└仕様書もしっかりした量産
・他にどんな部分で協力してもらえそうか
└Houdini、EmberGenなどでのシミュレーション
└演出提案
└シェーダー作成
└モジュール作成
└手描き連番アニメーションの作成
└アニメーション、カメラワーク作成
└問題解決、チーム育成 など
最近のエフェクトの品質を意識できているか

自分が昔好きだったエフェクトの作成、昔携わった作品も凄く良いですが、
全体のクオリティ、テクスチャなどが10年20年前のエフェクト作品だと
どうしても「最近の作品はあまり見ていないのかな?」「最近のエフェクトを制作するのは難しそう…」という印象になりやすいです。
案件にもよりますが、現場では1~5年後にリリースされても世間に評価されるエフェクトを目指して作ることも多いです。
「最近のクオリティ高いゲームではどんなクオリティ、どんな内容のエフェクトが発生しているか」をぜひ参考にして、そのゲームに新規実装されても違和感ないレベルを目指せると即戦力として活躍できるかと思います。
動き・その他に違和感がないか

直感的に違和感を感じないかもすごく大事なポイントです。
特に現実にも存在する炎、煙、岩、光、冷気など物理現象ほど普段何気なくでも見ている分違和感を感じます。
また、「動きの気持ちよさ」、「模様のきれいさ」「配色」なども一般的に気持ちよく感じる内容はおおよそ共通する部分はあると思います。
仮にこれらの点が心許ない場合は、「フィードバックをだした際に齟齬が発生してしまいそう…」「自身でのブラッシュアップに苦戦するかもしれない」などの懸念に繋がります。
自分で作成している場合は、翌日に見直してみる、動画として撮影してみるなど客観的な視点で見るのも良いかと思います。
できれば他者に見てもらうのがすごくおすすめです。
ゲームエフェクトとしての「役割」を意識できているか

たまに見かけるのが、「このエフェクトはゲームでは何の用途で使うんだろう??」と思ってしまう作品です。
ゲームエフェクトの大事な役割として「ゲームの仕様をユーザーに伝える」という点があります。今何が起きているか、どんな効果の技なのかなどです。
本人の中では考えた設定などがあるのかもしれませんが、
ゲームでは「インゲーム、カットシーン、背景」などおおよその枠組みが分かれており、その中で「攻撃、バフ/デバフ、回復」など用途が分かれています。
個性のあるエフェクトを作るのはすごく良いですが、ゲームの仕様をユーザーに伝えるためにも他のゲームもよく観察した上で一般の共通イメージを意識できると良いかと思います。
物理的な挙動を意識できているか
ファンタジーなエフェクト、デフォルメされたエフェクトに関しても元は何か現実の表現をデフォルメ化、概念を記号化して表現しているものが多いです。
よくあるあまり良くない例として、
・岩がすごくふわふわしている。 → 物の重さによる挙動
・炎がすごくノイズで乱れた動きをしている。 → 温度による気体の上昇、下降
・煙がその場ですごく固い動きをしている。 → 気体の動き
など
想像の中だけで作ってしまうとどうしても曖昧な記憶からの再現になってしまうので、リファレンスをしっかりと観察し、分析した上で違和感のない作品が作れるのが理想です。
起承転結/を意識できているか
よくあるのが
「最初のチャージの割にインパクトの威力が弱いな…」
「ここで出たエフェクトは何の意味があったんだろうか?」
「メインはどこだったんだろう?」
「突然発生して何が起きたかわからなかった」など
エフェクトはアニメーションと同じく時間軸の中で動きのある作品です。
前後の整合性や、予兆→盛り上がり→余韻なども意識できるとエフェクト全体を通して気持ちのいい演出に繋がっていくと思います。

評価されるデモリールの構成や順番の考え方
使用エンジン(ツール)を記載する
UnityやUnrealEngineなどエンジンの記載があると仕事関連の参考にしやすいです。

一番よくできた作品を一番前へ
新しい作品は前の方へ
これらについては採用担当の方も限られた時間で確認はしているので、続きも見たくなるような第一印象はすごく大事だと思っていただいた方が良いかと思います。
新しい作品のほうが経験値を積んでよりクオリティが高い傾向にあるというのも一つの理由です。
(個人的には応募企業、案件に応じてよりマッチする作品を前順番にしたほうがぱっと見は参考にはしやすいかなとは思います)
クオリティが特に低い作品はない方がいいかも…
下限として見られ「本当にクオリティを上げられるのだろうか…」と不安に繋がることも
属性は偏りすぎないように(魔法、物理なども)
同じ属性が多いと「この属性、系統が得意なんだ」とわかりやすい反面、「他の属性は作れるのだろうか…?」と懸念に繋がることもあります。
可能であれば複数属性、魔法や物理も交えられると良いかと思います。
物理系のエフェクトも入れた方がおすすめ
岩や氷、その他自然系エフェクトでは、重力感や自然現象への興味、感性はどの程度あるかがわかりやすいです。
デフォルメ作品でもリアルの現象がベースになっていることが多いのでテイスト問わず実力をアピールしやすい内容になるかと。
テイストは自分の希望に応じて
将来どんな案件に携わりたいのか、どんな会社に行きたいかなどに応じて「軸にするテイスト」があると自分に自身も持てるかと思います。
カットシーンは無理に入れなくてもOK
カットシーンでカメラの制御に難航しそうなどであれば、無理にカメラを付けなくてもいいかなとは思います。
なれていなくていまいちなカメラになってしまうよりは、その分の時間をエフェクト作成、ブラッシュアップに使用してもらった方が良いと個人的には考えています。
もちろんカメラも入ったカットシーン演出が入れられればベストです。

よくあるもったいない例と改善案
それぞれの詳細については後日、別ページにて解説予定です。(お待ちください)
細かい部分は置いておいて、ぱっと見で「本当にゲームエフェクトがやりたいんだろうか…?」「リファレンス集めたのかな?」「クオリティを上げるこだわりがそこまでではない?」などと感じられてしまうことがあります。
以下は特にチェックしておいた方が良い内容です。
<構成>
オープニング(OP)画面に凝ってしまっている。OPが長い。
→あっても1~2秒くらいでいいかなと思います。
ほぼAeやHoudiniなどの映像作品(ゲームエンジン作品がほぼない)
・ほぼどこかのチュートリアルのまま
・似たような種類のエフェクトが多い(ヒット、スラッシュ、バフなど)
動画がすぐに見られない/通しで見られない
・PDFのみ「映像/動画はQRコードから」となっていて、リンクがない / 動画が添付されていない。
・動画がすごく小分けになっている。
☆ポイント
企業の採用担当の方も沢山の応募の中、日々の業務の中で作品を確認しています。
その中で「すぐに作品が見られない」「スマホなどでQRを読み取る必要がある」
「小分けで動画を見ていかなければならない」となると結構負担になってしまいます。
<エフェクト以外編>
キャラのモデリングやアニメーションの方が力が入っていそう
著作権的に怪しいアセットが使われている(自主製作でのIPキャラなど)
音楽はない方が良いかも
<リファレンス編>
リファレンスをあまり集められていない印象を感じてしまう
質感、動き、構成、タイミング など気持ちよさが自分の頭の中のイメージだけで完結してしまっていそう。
実際のゲーム、映画、アニメ、自然界の映像などをよく観察、分析することが大事
<エフェクト編>
何の表現か曖昧なパーツがなんとなく発生している
その要素は何を表しているのか、なんとなく発生していないか。なんのエネルギーか。
そのゲームの仕様がユーザーに伝わるか。
物理的な挙動があまり考慮されていない
光、重さ、温度による差 など
ディテールや質感がちぐはぐ
サイズ感に合っていない。リアルとアニメ調がなじんでいない。
画面効果(ポストプロセス)がかなり強い/多用している
INTENSITYを上げすぎ / BLOOMが強すぎて画面全体が白く霞がかっている
メッシュの形状があからさまに見えている
色が単色、原色、ごちゃごちゃしている
指向性に違和感がある
基本的なパーティクル制御に不安がある
└パーティクルがぱっと消えている
└動きがリニア
ポートフォリオや補足資料の活用方法
シンキングプロセスを見せる
改善の余地ありかも…
- デモリールの場面のスクショを並べて、
「ここでは何が起きて、何が起きて、何が起きる」
「シールドの着弾部分はこの色からこの色に変化する」
などという出てきたエフェクトや、状況の説明
☆ポイント
上記の内容に関しては基本的には「動画を見ればわかる」となってしまう点かなと思います。
より良いかも
- 「今回はこのようなエフェクトを作りたかったので、どうコンセプトを考えたか、どんなモチーフから発想を得たか、なぜそのアイディアに絞ったか」

- 「魔法陣はこのような表現をしたかったので、このように分解、制御して、このようにした」

- 「爆発はルックを詰めた段階ではかなりオーバードローが高く重かったので、このように分析、工夫して、こう軽量化した」


- 「着弾点からはじけるエフェクトの表現はこんなルック、仕様で出したかったので、こういう制御にした」
- 「シールドの着弾点はこんな仕様、ルックを想定したため、このような構造で製作した。」
- 「チーム製作を意識して、他メンバー用に悩んだ点を簡単にまとめたり、積極的にチームにシェアしたりしていた。」
☆ポイント
一緒に仕事をするうえで、「どんな思考でどんな動きをしてくれそうか」わかるのはとても大事
強みの魅せ方
見る人のことを考える
・画像は大きく!!
・文章はある程度簡潔に(びっしりではない程度に)
など

工夫したポイントをアピールする
・絵コンテ
・テクスチャ ・メッシュ
など

まとめ
いかがでしたでしょうか?
経験のある方からしたら基礎的な部分も多かったかと思いますが、僕自身もっと早く知りたかった内容をまとめさせていただきました。
デモリールやポートフォリオ作成の一助になれば幸いです!

